柳田の妖怪観というのも少し厄介でして。というのも柳田の妖怪観=現在の妖怪観ではないのです。
柳田の言う妖怪とはある民俗内で蒐集された怪しいモノゴトに関する語彙であってそれは必ずしも江戸の化物とイコールにはならないのですね。柳田にとっては民俗内で蒐集されない妖怪は例え現在、過去において妖怪だと思われていたものでも妖怪にはならなかったのです。例えば、ぬらりひょんなんて妖怪の総大将とされるほどの妖怪ですが、これには民俗学的な伝承なんて残ってないので柳田民俗学においてはぬらりひょんは妖怪ではないのです。
むしろそのような江戸の化物、つまり化物の図像ですか、そういうのを好んで集めたのは江馬務や藤沢衛彦の風俗史学だと言われています。ぬらりひょんが妖怪の総大将になったのは藤沢衛彦の『妖怪画談全集』によると考えられているようですね。
つまり、現在の妖怪観というのは即ち水木しげるの描く妖怪であり、水木しげるの妖怪というのは柳田民俗学と江馬や藤沢の風俗史学を足し合わせたものだと言えますね。